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研究内容

磁気クリーナ -Magnetic cleaner-

 現在,多くの有人月面探査計画において長期間の月面活動が想定されているが,月土壌に含まれるルナダストと呼ばれる粒径数mmから数100mm以下の微粒子が宇宙服に付着し,宇宙服の表面を磨耗させることや宇宙服を脱いだ際に呼吸に伴って人体に侵入する問題が指摘されている.長期間の月面活動を実現するためには上記の問題を解決する必要があるが,現在まで有効な解決策は示されていない

 一方,アポロ計画で月から持ち帰った砂の分析の結果,ルナダストは磁性体であることがわかっている.そこで,上記の問題を解決すべく,電源・動力源が不要で小型・軽量の,磁気力を利用した除去機構を開発している.

■ ルナダスト除去機構

 本研究で使用するルナダスト除去機構の基本的な構造と原理をFig. 1に示す.粒子を捕捉・分離する特殊な磁極配置を持つマグネットロール,ロールの周りを回転しながら粒子を分離領域まで搬送するスリーブ,分離された粒子を回収する回収箱の3つを中心に構成されている.マグネットロールは複数の永久磁石を軸に張り合わせたもので,異極が隣り合う区間では磁気力によって粒子を捕捉し,S極が隣り合う区間では斥力によって粒子を分離する.

 ルナダストの除去原理は,宇宙服表面にスリーブが当たるようにして除去機構を動かしながら除去対象に近づけ,マグネットロールの磁気力によって粒子を捕捉する.その後,粒子はスリーブの回転によってS極が隣接する区間に運ばれる.そこでS極同士の磁気反発力を受けてロール上より分離され,回収箱に回収される.この動作を連続的に繰り返すことで,粒子を除去する.

■ 実験

ルナダスト除去機構は、磁性体を除去するためのマグネットロールとマグネットロールの周りを回転するスリーブ、および宇宙服から吸着したルナダストを回収するボックスから構成される。マグネットロールは特殊な磁極配置により、2つのS極が隣接する区間で磁性粒子に対し斥力が働くように設計されている。 宇宙服からルナダストを分離するメカニズムは以下の通りである。

① ルナダストが付着した宇宙服に本機構を接触させ、マグネットロールから発生する磁気力により
     ルナダストを捕捉する。
② 機構を前後に動かすことでスリーブを回転させ、捕捉したルナダストを隣接する2つのS極の
     区間上まで搬送する。
③ 磁石棒から発生する斥力により、ルナダストをスリーブから分離させ、回収容器に回収する。

この一連の動作を繰り返すことで、ルナダストの捕捉と分離を連続的に行い、ルナダストを除去することが可能である。図2に作成したルナダスト除去機構の概要図を示す。

図1 ルナダスト除去原理 図2 ルナダスト除去機構概要図

作成したルナダスト除去機構を用いて布に付着した月模擬砂を除去する様子(動画1)と月模擬砂が除去機構から分離される様子(動画2)をご覧ください。

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動画1 月模擬砂の除去の様子
(wmv形式 185 KB)
動画2 月模擬砂分離の高速度カメラ撮影
(wmv形式 2.15 MB)

■ 計算

マグネットロールの外部磁場計算(図3)と個別要素法を用いた月模擬砂除去の数値シミュレーション(動画2)を行っております。月模擬砂が捕捉・分離される様子を再現できていることが確認できます。今後は実際の宇宙環境を再現した計算を再現し、除去効率に影響を及ぼすパラメータの最適化を図る予定です。

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図3 マグネットロールの外部磁場分布 動画3 数値シミュレーション
(wmv形式 1.99 MB)

更新日: 2012/05/14 15:18:00