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研究内容

INKJET - Spray-cooling班

■ 研究内容

小型で簡単な冷却機構として,静電インクジェット技術によるスプレー冷却を研究しています.静電インクジェットを利用した冷却としては,液体の冷媒をスプレーにして冷却対象に衝突させる衝突噴流冷却や,スプレー状の冷媒とコロナ放電により生じるイオン風を利用した気液二相流冷却,気化した冷媒とイオン風を利用した気体単相の冷却などが考えられます.われわれはまず,電子機器の局所冷却を目的とし,絶縁冷媒をスプレー状に吐出する衝突噴流冷却について基礎的な実験を行いました.

■ スプレー吐出の原理

静電インクジェットにおけるスプレー吐出は以下のような原理で形成されると考えられています. まず,静電力によりノズルから比較的微小な液滴が吐出されます.この液滴 (primary droplet) は帯電しており,落下中に液滴の一部が蒸発することで電荷を保存したまま液滴の表面積が小さくなります.表面積の小さくなった液滴は静電的な斥力に耐え切れなくなり細かく分裂し,より微小な液滴 (secondary droplet) が形成されます.この微小な液滴は互いに反発しながら落下するため,スプレーが形成されます.

■ 液滴形成の観察

上記の原理を確認するために,図1に示す実験装置を構成し,高速度カメラによる撮影を行いました.ノズル電極には,内径200 um-外径350 umの非常に細いチューブの内部に金属線を挿入したものを使用しています.冷媒にはFC-72を使用しました.


図1  静電インクジェットの実験装置図
(1: シリンジ, 2: ノズル電極, 3: 平板電極, 4: 高圧電源, 5: ステージコントローラ,
6: PC, 7: リニアステージ, 8;高速度カメラ, 9: ライト)

図2に示すように,ノズル電極に電圧を印加しない場合は日常に良く見られる重力と毛細管現象による落下が確認できます.ノズル電極に10 kVの高電圧を印加すると,図3 (b) に示すように,ノズル外周に回り込んだ液の先端部から微小量の液滴が吐出される様子が確認できます.吐出される液滴径は大小さまざまですが,約70 umの液滴がもっとも多く吐出されていることが確認できました.  今後は液滴の分裂をカメラで捉えることを目指しています.

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図2  静電力を利用しない吐出 (印加電圧0 kV,撮影速度 60 fps)
(wmv形式 114 KB)

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(a)  ノズル写真 (b)  静電力による吐出の様子
(wmv形式 411 KB)
図3  絶縁冷媒の吐出の様子 (ノズル外径350 um,印加電圧 10 kV,撮影速度 20000 fps)

■ 液滴形成の観察

温度によって色が変化する液晶サーモフィルムをホットプレート上に設置し,スプレーによる冷却を可視化した様子を図4に示します.緑色が温度の低い部分です.

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図4  液晶サーモフィルムによるスプレー冷却の可視化 (gap 2.0 mm,印加電圧10 kV)
(wmv形式 825 KB)

更新日: 2012/05/14 15:18:00