Particle Classification -静電力を利用した分級機構
研究背景
 分級とは、粒子を任意の粒径に選別することです。近年、月面探査に関する研究開発が世界中で行われています.そのひとつに、現地の資源(ルナダスト)を利用した月面開発が検討されています.特に、ルナダスト中の10μm以下の粒子にはレアメタルの一つであるプラチナなどが多く存在していることが知られており,分級技術が必要とされています.地球上で行われている分級方法では気体や液体などの媒体が必要とされますが,月面上にこれらの媒体は存在しません.そこで,本研究ではルナダストの分級方法のひとつとして気体や液体などの媒体を必要としない,静電力を利用した分級機構の開発を行っています.

研究内容
1. 電解カーテン型分級機構
 図1に示す分級機構は縞状電極で構成されており,互いに逆位相の交流電圧を印加することで隣り合った電極間に電位差が発生します.これにより,電極表面には特殊な電界が形成され,粒子はクーロン力や分極力の影響を受けます.これにより特定の径の粒子だけが電極上方の空間に閉じ込められます.この装置を傾斜させた分級機構を図2に示します.小さい粒子は静電力が支配的であるのに対し,大きい粒子は重力が支配的であるという特徴を利用した分級機構です.

分級機構

図 1 電解カーテン型分級機構


分級機構

図 2 静電力による帯電粒子の落下移動距離の差を利用した分級機構



シミュレーション結果

 実験結果の一例として、図3に分級前後の粒子の体積分布を示します.この図から,体積のピークが小粒径へ移動していることが確認できます.

分級機構


図 3 分級前後の体積割合の変化

2. 進行波電解型分級機構
図4に示す分級機構では,位相を順にπ/2ずつずらした4相の交流信号を縞状電極に出力し,電極表面上に不平等電界を発生させます.これにより,電極表面上に設置された粒子はクーロン力や分極力の影響を受け飛翔します.この際,粒径が小さい小粒子の方が相対的に電界による作用力を強く受け高く飛翔することを利用し、電極上部に設けた回収BOXで小粒子を回収します.

分級機構

図4 進行波電解型分級機構


(左)高速度カメラによる動画  (右)シミュレーション動画
研究概要書