Electrostatic Shield
研究背景
 近年,次世代宇宙開発の拠点として月が注目されており,世界各国で探査機器による月面環境の調査が計画されています.しかし,月面上にはルナダストと呼ばれる微小な砂塵が存在し,月面活動への悪影響が懸念されています.月土壌レゴリスに含まるルナダストは,粒径が数μmからなり,太陽風や紫外線による粒子の帯電,高真空環境による帯電量の保持,微小重力環境(1/6G)などの要因から,月面上では砂塵が舞っているといわれています.このルナダストが機器に与える影響として,光学機器や熱交換器の不調,計測器の誤測,シールの劣化などが挙げられています.
 我々は,これらの問題のうち,シールの劣化に着目し,月面探査機器のシール部の保護を目的とした実用的で高性能な防塵機構の開発を行っています.

走行中のローバとルナダストの付着したタイヤ
走行中のローバとルナダストの付着したタイヤ

研究内容

静電シールド機構概略図
静電シールド機構概略図

 ルナダストが微小粒子で高い比帯電量を持つことや,月面が高真空・微小重力環境であることに着目し,静電力を用いてルナダストの侵入を防ぐ静電シールド機構の開発を行っています.本機構は,隙間を挟むように2本の電極を平行に設置し,片方の電極に方形波交流電圧を印加することで隙間付近に電界カーテンを形成し,静電力によりルナダストを隙間から遠方へ誘導する仕組みとなっています.主な特長として,可動部のない単純構造,低消費電力,メンテナンスフリーという点が挙げられ,月面活動に適しているといえます.
 研究では,地上試験と粒子挙動シミュレーションの双方から,静電シールド機構の性能評価を行い,より実用的で高性能な機構を目指しています.


高速度カメラ動画                    シミュレーション動画

研究概要書